金沢備忘録2
喫茶四月でしばらく涼んだ後"鈴木大拙館"へ。
水の上に浮かんでいるような建物が気になって行ってみた。
"思索空間"と名付けられたこの建物の中はロの字の畳の椅子が置かれている。朝から歩きっぱなしなのでひとまず座って休憩。ここに到着したとき再び雨が降ってきて水面に波紋が広がっていくのをぼーっと眺める。風に揺られる柳が涼しげでずっといられそうだった。
そろそろお昼ごはんを食べたい。先日行きつけの喫茶店で居合わせた方に教えてもらった練り物が美味しいというお店へ向かう。すると入口には「本日は都合によりお休みします」との貼り紙が。まあこういうこともあるか...
暑さもあって若干疲れが出てきて頭が回らない。調べる気力はなく せっかくなら金沢名物を食べたいと思い近くにあったおでん屋さんに駆け込んだ。おでんの盛り合わせと一緒に思わずレモンサワーを注文。
出汁はあっさりめで 具材は車麩や赤巻き、ホタテなどが金沢ならでは。出汁にも海鮮の風味がほんのり移っていて、この出汁だけでもお酒が進む。何も悪いことをしているわけではないけれど昼間からお酒を飲むのは背徳感がある。
ほろ酔いでお店を出て 行ってみたいと思っていたカフェへ向かう。たくさん歩いているとはいえ 次々といろんな飲み物や食べ物が入ってしまう胃袋と 切り替えの早さに自分でも驚く。
"Cafe Ashito"
このお店を知った経緯は忘れてしまったけれど アンティークの器と美味しそうな焼き菓子に惹かれて数年前からピンを立てていた。カウンターの席がひとつだけ空いていてタイミングよく入れた。混んでいたり 席数の少ないお店にするっと入れたりするのも一人旅の特権。男性の店主さんが一人で切り盛りされていて笑顔で迎えてくれた。
席に着き iPhoneを裏に向けてテーブルに置いた瞬間
「お、犬かよステッカーじゃないですか!」
と店主さん。
"犬かよ"というのはフードエッセイストの平野紗季子さんが出されている本のタイトル。その本が出版されたときに作られたグッズのステッカーを私はずっとiPhoneケースに入れている。
なかなかインパクトがあるので 行く先々で店員さんや初対面の人に「それ何ですか?」と話しかけられることもしばしば。説明してもいまいち盛り上がらず「へ〜」で終わるのだけれど 知っている人に出会うと一瞬で打ち解けることができる魔法のステッカー。
「平野さん、ここに2回来てくれたことがあって...」とその時の様子を仕草や表情まで細かく再現しながらお話してくださった。そして注文したアイスコーヒーとバナナケーキを平野さんに出したのと同じグラスとお皿で
「さきこセットです」
と出してくださって歓喜。
私は間接的にさきこ様に触れたことになる(?)
色々お話していると 店主さんの実家が私が今住んでいる街のすぐ近くで その辺りのおすすめのお店をたくさん教えてもらった。近所でずっと気になりつつ入る勇気がなかったカフェが まさかのその店主さんのお父様がされているカフェだと知って驚いた。すごい偶然。今度行ってみよう。
気遣い・トーク力・お店の世界観、いろんな要素に圧倒されながら ちょっとお手洗いに。
私は気に入ったお店では必ずお手洗いに行く。行く必要がなくても行く。素敵だな〜と思うお店はそこにも拘りが詰まっている気がする。
扉を開けるといい香りとともにグリーンの壁、MERCI BAKEのポスター、お客様のお子様なのか子どもが書いたであろうお店のメニュー、電気のスイッチ、360℃楽しくてときめきが止まらなかった。ここを訪れる機会があれば ぜひお手洗いに入ってみてほしい。
一泊二日の旅。私は一日目のこの時点ですでに満たされすぎていた。もう東京へ戻ってもいいくらいの気持ちだった。
けれど 朝5時に起きて乗ろうとした電車が運休になり バスまでの待ち時間にテイクアウトしたドリンクをほとんど飲まずして駅の床にぶちまけ 挙句の果てに8時間バスに揺られてへとへとで金沢に到着するであろう友人(散々...)を置いて帰るわけにはいかない。せめて美味しい晩ごはんだけでも...と思い 最後に図々しくお魚料理の美味しいご飯屋さんまで教えてもらってお店を後にした。
チェックインをしにホテルに向かう道のりで"オヨヨ書林"に立ち寄り古本を数冊購入。ちょっと寄り道のつもりが面白そうな本がたくさんあって気付いたら1時間ほど物色していた。ブログを始めたくせに普段ほとんど本を読まないから語彙力がないし知らない言葉もたくさんある。今年こそはたくさん読書をしよう。
ようやく友人が到着し 教えてもらった"あぐり"というお店へ。加賀野菜や海の幸を堪能して 友人の幸せそうな顔を見てほっとした。
2日目は市場で海鮮を食べ 茶屋街をぶらぶら散策。私は夕方の新幹線に乗り 友人は終電まで満喫すると言って金沢に残った。
解散した後、尾山神社を訪れた友人から「神社の自販機でジュース買ったらお釣りが全部10円玉で返ってきた」と写真が送られてきた。そしてこの10円玉たちを賽銭箱に入れて引いたおみくじには「思うようにいかないことがある」と書いてあったらしい。最初から最後まで引きが強すぎる。
そんなこんなで 可笑しくて楽しい2日間となった。
旅をするとき 下調べをしてお店やルートを考えたりするのも楽しいけれど その時々の気分や状況で流れに身を任せてみるのもいいなと思った。"予測できないことを楽しむ"ことができるようになった。
次はどこへ行こう。
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